第一期 第6回「まとめとWS参加者によるコンサート」
日時:2019年3月17日(日)
講師:井上郷子、伊藤祐二、三浦明道
出演:ワークショップ受講生
【講師・伊藤祐二によるFacebookでの報告】
録画、録音をまじえてここまでのワークショップを総括して報告、合わせてワークショップ受講生全員によるコンサート。
【プログラム】
●木暮照美
ヘンリー・カウエル
《3つのアイルランド伝説》よりマノノーンの潮(1912)不吉な響き(1930
●西村紗知
ヘンリー・カウエル エオリアン・ハープ(1923)、歓喜(1919)
●筒井志歩
ジョン・ケージ ホロコーストの名のもとに(1942)
●川浦義広
ジョン・ケージ そして大地はまた実を結ぶ(1942)
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●伊藤明子
ジョン・ケージ バッカスの祭り(1940)
●松波匠太郎
ジョン・ケージ 思い出せない・・・の記憶(1944)
●本橋亮子
ヘンリー・カウエル 富士山の雪(1922) バンシー(1925)
●加藤麗子
ジョン・ケージ アモーレス(1943)第1、4曲
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●久保田晃弘
ジョン・ケージ アモーレス(1943)第1、4曲
●石本仁美
ヘンリー・カウエル とら(1930)
●藪内裕子+川口慈子
ジョージ・クラム 1979年のクリスマスのための小組曲(1980) (藪内:第1.4,6曲、川口:第2,3,5,7曲)
受講生の皆さんの真剣な取り組みと、各自の創意工夫が随所に見られ、聴きごたえ (見ごたえ) のあるコンサートとなりました。各受講生の演奏には、特殊奏法に引きずられる事なく、そこに音楽を生み出そうとする姿勢が一貫して見られ、大変に素晴らしく、井上郷子講師の音楽に対する姿勢の反映であったと強く感じました。受講生の皆さん、ご苦労様でした! 聴講に来ていただいた多くの皆さま、ご支援ありがとうございました。
すでに、本ワークショップ第二期の受講生受付は定員に達して終了しております。3年間のプロジェクト全体が着実な成果となりますよう、引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。
【庄野進によるレポート】
ワークショップ・レポート第1期第6回「まとめとWS参加者によるコンサート」(17mar19)
ワークショプ第1期の最終回として、これまでの作業の振り返りと、受講生によるコンサートが開かれた。最初に、ワークショップの受講生募集のための動画が上映された。その後、オープニング・イベントとして行われたシンポジウムで、このプロジェクトの目的と最終的に目指すことが提示されたこと、ワークショップの第1回は、これからやることとピアノの構造について、第2回は、そこから既に100年近くが経過しているカウエルの内部奏法について、第3回、第4回は、ケージのプリパレーションについて、傷つけないためにどうするか、第3回で上手くいかなかったことが第4回で随分改善されたこと、第5回は、篠田昌伸によるクラムの『マクロコスモス』の実習が行われたことが、まとめとして示された。
次いで実習生によるコンサートが行われた。今回そのために一人当たり1時間半のリハーサルが行われたことが報告された。なお、ワークショップの編集動画がまとめとして上映された。以下にコンサートのプログラムをあげておく。
○木暮照美 ヘンリー・カウエル:《3つのアイルランド伝説》よりマノノーンの潮流(1912)不吉な響き(1930)○西村紗知 ヘンリー・カウエル:エオリアン・ハープ(1923)歓喜(1919)○筒井志歩 ジョン・ケージ:ホロコーストの名のもとに(1942)○川浦義広 ジョン・ケージ:そして大地はまた実を結ぶ(1942)○伊藤明子 ジョン・ケージ:バッカスの祭り(1940)○松波匠太郎 ジョン・ケージ:思い出せない…の記憶(1944)○本橋亮子 ヘンリー・カウエル:富士山の雪(1922)バンシー(1925)○加藤麗子 ジョン・ケージ:アモーレス(1943)第1、4 曲○久保田晃弘 ジョン・ケージ:アモーレス(1943)第1、4 曲○石本仁美 ヘンリー・カウエル:とら(1930)○藪内裕子+川口慈子 ジョージ・クラム:1979 年のクリスマスのための小組曲(1980)(藪内:第1.4,6 曲、川口:第 2,3,5,7 曲)
個々の評は控えるが、全体の感想として、練習を重ね、拡張奏法をやってみるというレベル以上の、作品の表現や全体構成にまで配慮され、タッチも工夫したた演奏が多かったこと、ワークショップで取り上げられた作品以外の曲に挑戦し、かなり的確に拡張奏法の解釈が行われたことを述べたい。ただ、ハーモニクスの演奏はさらなる修練が必要のように思う。
個々の演奏後、井上による奏者へのインタビューが行われ、問題点や苦心したことなどが語られた。いくつかを紹介すると、位置指定のないプリペアード・ピアノ曲の場合、試行錯誤の上複雑な倍音が出るようにしたこと、響板にボルトが当たるようにという指示に対して、傷つけないような適切な保護材を見つけるのに苦労したこと、ダンスのための作品なので、長い休符の部分などをそれを踏まえて演奏したこと、ミスタッチで生音が出たことを反省したことなどが語られた。
なお、プリペアによってもピッチ感を残したかったという意図が語れたが、ケージの方向とは異なるように思う。
最後に井上による演奏が行われたが、やはりプリペアの見事さと解釈は圧倒的であった。
その後、受講生、聴講生を含めた懇親会が行われ、ワークショップ第1期が締められた。