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ワークショップの記録

第二期 第2回「プリパレーション基礎編〜ワークショップ第一期のおさらい

日時:2019年5月26日(日)

講師:井上郷子、伊藤祐二、三浦明道

 

【講師・伊藤祐二によるFacebookでの報告】

第2期から新たに受講された方の為に、第1期で実習したプリパレーションの基礎をおさらいします。
最初に、井上郷子講師による、J・ケージの“孤島の娘たち”の演奏で始まり、次に、ダニエル・ウルフの作品で“ピアノの倍音を聴く”実習。聴こえなければ音楽はできません! 又、この楽譜を実例に、三浦講師(調律師)と伊藤講師(作曲家)によって、ピアノのハーモニクス、倍音の出方と、平均律とのピッチのずれ、それによる唸りの発生を解説、起こっている現象を再確認。さらに、ピアノの弦が、実際にはどのように振動しているか、さらにさらに、実際の調律の現場がどうなっているか、と掘り下げ、理論上の事が、実際の現場でそのまま適用できると考えると危うい、という所にまで話は発展しました。
次いで、アーサー・グリーンの「7つのキノコと1つのワルツ」を題材に、受講生の皆さんに実際のプリパレーションの実習と演奏をしていただきました。限られた時間の中にもかかわらず、しっかりと演奏まで実施できました。(時間切れで、一部、次回送りとなりました。)井上講師によって、同じプリパレーションでも、演奏のタッチによって、得られる音はものすごく変わる事が示され、さらにこの先に探求(練習と経験)すべき果てしない音楽世界が広がっている事が実感されました。
プリパレーションは、一見、遊びのような景色ですが、音楽家の手と耳と想像力から、本当に豊かな世界が広がっている事を改めて実感。

 

 

【庄野進によるレポート】

J・ケージのプリペアード・ピアノ曲孤島の娘たちの井上講師による模範演奏から始められた。それを基に記譜法とプリパレーションの説明がなされた。特異なプリパレーションの道具としてタイプライター・ボルトが指示されているが、当時は一般的に使用されていたタイプライターも現在では姿を消し、このボルトも入手が困難になり、代替ボルトを使用しているとの説明があった。ペダルに関してはこの曲ではなし。ただしソフトペダルは終始踏まれている。プリペアする際、ダンパーペダルを踏んでおく必要性が改めて説明された。 

次いで、プリパレーションの弦の位置を決める際にしばしば参照される、高次倍音を聞き取る必要性を示すために、ダニエル・ウルフのAmong the Wire, an Illusion Spaceの実習が行われた。この曲はアルビン・ルシエに捧げられており、彼のMusic On A Long Thin Wire―一本の長い針金を電磁的に振動させ、偶発的に部分音が変化しながら生じる作品―を念頭に作られている。実際には低音域の隣接した2つのキーを押さえ、それより上の音域のキーを叩くことで、高次の倍音が生じてうなりとして聞こえるという作品であり、その倍音を聞く訓練として、行われた。 

プリペアの実際としては、アーサー・グリーンの7つの野生のきのこと1つのワルツが取り上げられ、別紙資料に訳出された作曲者による「この組曲のためのプリパレイションについて」に沿って説明がなされた。消しゴムによるプリパレイションで用いられる楔型の消しゴムについては、日本ではその「形状の消しゴムは見かけないという説明があったが、偶々受講生の一人が所持しており、具体的に参照出来たのは幸いであった。 

今回のワークショップには、第1期の受講生と、初めて参加する受講生が混在しており、経験者と初参加者とを組み合わせて、プリペアを行う等の工夫がなされていた。 

また、同じプリパレーションでもタッチによって音色が随分異なること、交差弦の場所でのプリペアの難しさなどが指摘された。