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ワークショップの記録

第四期 第1回「拡張された奏法による二重奏

日時:2020年8月9日(日)

講師:井上郷子、伊藤祐二、三浦明道

ゲスト作曲家:田中吉史、渡辺俊哉、見澤ゆかり

ゲストプレーヤー:村田厚生

 

【講師・伊藤祐二によるFacebookでの報告】

Covid-19 により中断していましたワークショップを、配信にて再開し、第4期第1回を行いました。
本ワークショップの為に、田中吉史、渡辺俊哉、見澤ゆかり の三人の作曲家に、トロンボーンとピアノの二重奏を作曲していただき(!!)当日、全員おいでいただき(!!)ゲストプレイヤーに、村田厚生さんをお迎えする(!!)という、本当に贅沢な第1回でした。
ただ、三密対策上、受講生を2グループに分け、2ローテーションで行いましたので、1曲にかけられる時間が半分となり、作曲者の皆さんには、少々(かなり)申し訳ない思いでした。
受講生の皆さんは、難しい譜面を短い時間で見てきた状態なので、大変だったと思いますが、得難い経験もしていただけたのではと思います。終わってみると、前半は、受講生、講師ともに、配信を含む短時間の進行で余裕が無く、後半は、配信が無く、時間の余裕があり、進行にも慣れて、より、こなれたワークショップになったように思います。
また、後半には、見澤作品にみられるパフォーマンス的要素と、演奏者の安全性について論議する場面もありました。
(調律の三浦明道さんとは、ピアノ周りの感染防止対策をどうしたらよいか、と考える舞台裏もありました。)
上記のように、配信は初めてだったので、うまく行かない部分も多々あったと思います。
一歩一歩、改善できればと思っております。
ただ、受講生の皆さんのワークショップを大切にしようとすると、配信上難しい部分もあり、悩ましいところです。
配信部分を一手に引き受けてくださった後藤天さんに感謝。
それにしても、皆さんにご来場いただき、その場で起こるすべての出来事、すべての響き、すべての熱量を共有する事こそが大切なんだと、改めて感じさせられました。
感染対策は別として、 「新しい生活様式」 なるものを安易に語る風潮には疑問を感じます。
とは言え、にっくきCovid-19 は、まだ居座っています。 「その日」 が来るまで、配信でよろしくお願いいたします。

 

 

【庄野進によるレポート】

田中吉史、渡辺俊哉、見澤ゆかりの3人の作曲家による、本ワークショップのための書き下ろし練習曲(拡張されたピアノとトロンボーンのための作品)を実習する。ゲストにトロンボーン奏者、村田厚生。なお今回は、新型コロナ感染症対策のため、受講生を2班に分けて行い、聴講生は、ライヴ・ストリーミング配信によって視聴する。 

最初の田中吉史による『flageolets 3β for prepared piano and trombone』では、弦長の1/3等の位置指定によるゴムなどのピアノの13音にプリパレイションが施され、低音弦のミュート、ハーモニクス、クラスターなどの奏法が、グリッサンドやミュートを多用したトロンボーンのパートと共に演奏された。トロンボーンのパートでは、他にピアノの内部に向かって弦を共鳴させる奏法も求められている。ハーモニクスの音量に関して、他との微妙なバランスが求められる等の指摘がなされた。 

渡辺俊哉の『交差する眼差し』では、弱音を主体にしつつ、強弱に注意を払う必要のある繊細さが求められている。拡張されたピアノ奏法としては、クラスター、ピアノ弦のピッチカート(ペダル付き)、ハーモニクス等と並び、弦に本(文庫本の大きさ)を置いて弾く(ずらして一部を解除する部分もある)ことが求められる。終結部では、フォルテッシモで鳴らされる低音のト音の上で、その倍音が弦上で探られ、同時に低音弦を擦る動きも加えられる。トロンボーンのパートには、通常の奏法とミュートを用いた奏法とが使用されている。 

見澤ゆかりの『田端行進曲』では、トロンボーン奏者と共に、ピアノを二人の奏者が演奏する。ブレイスで区切られた最低音域には新聞紙に包まれた鉄板が置かれ、次のブレイスに区切られた部分には金属板、さらにブレイスで区切られた中音域と高音域には鎖が置かれる。鍵盤に向かって演奏する奏者(EBowを弦上に置いたりする奏法を含む)の他に、もう一人の奏者がピアノの蓋を上下させたり、手袋で弦を叩いたり、フレームを手或いは撥で叩く等の奏法で演奏する。トロンボーンのパートでは、上を向く、下を向く等の動作や、スライドの先をホースや塩ビパイプで伸ばして音を出すことなどが求められる。楽曲の構成要素が10秒、20秒となっているなどの作曲家による説明があった。 

三人の作曲家毎に異なった方向性をもった拡張ピアノとトロンボーンの奏法が展開され、興味深かった。