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ワークショップの記録

第四期 第3回「ワークショップ受講生による、作品制作発表及び演奏

日時:2020年9月6日(日)

講師:井上郷子、伊藤祐二、三浦明道

ゲストコメンテーター:渡辺俊哉、星谷丈生

Covid-19 の感染拡大によって、第三期受講生によるコンサートが延期となっていたため、
4期のプログラムに、第3期のプログラムの一部を加えて実施。

プログラム:
●小林このみ
ジョン・ケージ:バッカスの祭(1940)
●長谷川奈苗
モーリツ・エッゲルト:もし、ひとつの国の出身のひとりの作曲家が、ソロピアノのためにものすごく短い60個の断片を作曲したらどうなるだろうか(1998)
●川口慈子(作曲、演奏)
川口慈子:擬態(2020)
●筒井志歩(作曲、演奏)
筒井志歩:Deconstruction (2020)
●本橋亮子
ジョージ・クラム:《マクロコスモス第1巻》より 第1曲、第11曲(1972)
●松波匠太郎(作曲)
松波匠太郎:Study for prepared piano and live electronics(2020)
ピアノ:川口慈子
エレクトロニクス:北爪裕道
●森川あづさ
ヘルムート・ラッヘンマン:ギロ(1969/1988)
●木暮照美
ヘンリー・カウエル:《3つのアイルランド伝説》より 英雄サン、リルの声 (1918)
●石本仁美(作曲、演奏)
石本仁美:注文の多い料理店(宮沢賢治による)(2020)
(朗読:川口慈子)
●小西麻美
伊藤祐二:空間の詩学(1983)
●伊藤明子
アルフレート・シュニトケ:5つのアフォリズム (1990)
●飯野明日香
ディーター・シュネーベル:《バガテル》より 第5曲、第7曲(1986)
●後藤國彦(作曲、演奏)
後藤國彦:Bach at Greenwich Sings Matthew / バッハ、在グリニッチ、マタイを歌う(2020)
●森川あづさ
ジョン・ケージ:そして大地はまた実を結ぶ(1942)
●長谷川奈苗
ジョン・ケージ:マルセル・デュシャンのための音楽 (1947)
●伊藤明子
ヘンリー・カウエル:エオリアン・ハープ(1923)
●石本仁美
ヘンリー・カウエル:広告(1914/1966)
●小林このみ
ヤスナ・ヴェリチェコヴィッチ: グッド・バッハ (2001/4)

 

【講師・伊藤祐二によるFacebookでの報告】

盛り沢山のプログラム、曲ごとに施す様々なプリパレーション、エレクトロニクスを用いる作品もいくつかあり、しかもライヴ配信、技術的にも、進行の面でも、とても大変でしたが、結果的には、とても素晴らしいコンサートとなりました。
本ワークショップを通じての受講生の皆さんの進化、深化が如実に表れていて感慨深いものがありました。様々な技術面はもちろんのことですが、それを、あくまでも音楽表現としてとらえ、聴き出し、表現しようとする姿勢が、あの場では深く共有されていたと思います。受講生の皆さんが、他の受講生の演奏を聴いて、すごく触発されていたのも、その結果として印象的でした。又、それでも安易に満足することなく、さらなる学びを求める声も複数あり、それも含めて、とてもよいコンサートだったと思います。
ゲストコメンテーターをお願いした、渡辺俊哉、星谷丈生のお二人には、受講生を励ますと同時に、時に突っ込んだ指摘もしていただき、ありがとうございました。受講生には、貴重な経験になったと思います。
二日間をかけてリハーサルをしたとはいえ、エレクトロニクス、配信まわりはぶっつけ本番にならざるを得なかった部分も多く、そこを見事に乗り切っていただいた、Gok Sound の近藤祥昭さん、いつも配信をお願いしている後藤天さんに感謝。

 

 

【庄野進によるレポート】

今回は、受講生がワークショップで取り上げられてきた拡張されたピアノ奏法を含む作品と、受講生自身が作曲した、同じく拡張された奏法を含む作品の演奏を行った。受講生による作品に対しては、ゲストコメンテーターの星谷丈生、渡辺俊哉の両氏による質疑と講評が行われた。新型コロナウィルス対策として、換気のための休憩が3度挟まれた。 

既存の曲の演奏については、個々の演奏について言及しないが、プリペアードピアノの場合、ゴムによるミュートの場合はさほど問題ないが、その他の素材を弦に付ける場合、倍音の構成を聞き分けつつタッチでそれを制御することに難がある演奏もあった。クラスターについては比較的無難に演奏できていたように思う。声を伴う作品の場合、マスク越しに発音することで不明瞭になる場合があった。 

受講生による作品については、個々に取り上げる。川口慈子の『擬態』では、ピアノ弦のピッチカート、ハーモニクス、とミュート、フレームを叩く等の奏法が採用されていた。構造的に予測可能な部分が多いので、フレージングを替えた法が良いかもという指摘などが講評として出された。筒井志歩の『Deconstruction』では、低音域に本が置かれ、幾つかのプリパレイションが施され、フレームを擦る、低音弦を擦るなどの奏法が採用されていた。音色のコントラストが良い、構築的にまとまっているが、タイトルとは相容れないのではとの評があった。松波匠太郎の『Study for prepared piano and live electronics』では、クラスターやプリパレイションに加え、リバーブなどのエレクトロニクス処理が施された奏法が採用された。音質へのこだわりがあるようだが、さらに深化させると良い、プリパレイションはアナログなので、エレクトロニクスとの関係が問題かもしれない、むしろエレクトロニクスでしたことをすべてピアノでやるという方向もあったのではないか、等の評がなされた。石本仁美『注文の多い料理店(宮沢賢治による)』では、朗読、ピッチカート、クラスター、弦を掻き鳴らす、撥でフレームや弦を打つ、爪で弦を擦る等の奏法が採用された。